いろは歌


色は匂へど散りぬるを

我が世誰ぞ常ならむ

有為の奥山今日越えて

浅き夢見じ酔ひもせず

 

いろはにほへと ちりぬるを

わかよたれそ つねならむ

うゐのおくやま けふこえて

あさきゆめみし ゑひもせす

 

涅槃経の意訳とされる。「諸行無常」。7・5調の今様歌。手習い歌として近代まで広く利用された。

作者不詳。平安時代。いろは47。

有名な作品


雨降れば井堰を越ゆる

水分けて安く諸人

下り立ち植ゑし群苗

その稲よ真穂に栄えぬ

 

あめふれは ゐせきをこゆる

みつわけて やすくもろひと

おりたち うゑしむらなへ

そのいねよ まほにさかえぬ

 

本居宣長(国文学者)作。江戸時代。いろは47。

 

鳥啼く声す夢覚ませ

見よ明け渡る東を

空色栄えて沖つ辺に

帆船群れゐぬ靄の中

 

とりなくこゑす ゆめさませ

みよあけわたる ひんかしを

そらいろはえて おきつへに

ほふねむれゐぬ もやのうち

 

坂本百次郎作。明治36(1903)年。新聞社が公募した「国音の歌」1等。いろは48。

 

はる ねむさに めをこすり

なつ ひやけ そらへとせみ

あき まちの うたもかれて

ふゆ しろく おいぬほえよ わん

 

小椋佳作。平成元(1989)年。曲名「はるなつあきふゆ あいうえお」。2番もある。いろは46。

だから何なの


いろは歌とは、かな文字を重複なく連ねて意味のある歌にしたもの。キザな言い方をすれば、自らに厳しいルールを課して作る四行歌である。感心されることも多いが、声なき声が聞こえない訳でもない。「だから何なの」

 

まあ、芸術なんてそんなものだろう。例えばピカソの絵。芭蕉の句。「古池や蛙飛びこむ水の音」。だから何なの。せめて芸術との気概を持って精進しよう。それでも表題が迫ってきたときは。

 

・平安時代より由緒のある「古式ゆかしい知的パズル」

・「全部」「達成」「奇跡」などにも通ずる「言霊宿る開運吉祥アート」

 

あまり説明が過ぎるのも野暮でいけません。今話した落語のオチを解説するようなものですからね。(2012/03)